【第11回】変身(8/21読了)
お久しぶりです、涼歌です。
今回は、東野圭吾さんの「変身」です。
大まかなあらすじ。【ややネタバレあり】
真面目で臆病な主人公「成瀬純一」はある日不慮の事故により銃で脳を打ち抜かれ、
世界初の脳の移植手術を受けることになる。成瀬純一は意識を取り戻し、手術は
成功したかに思われた。しかし次第に純一は、以前の優しい性格を失っていき、
暴力的な性格へと変貌していく。成瀬純一の脳に移植されたのは、実は純一を
撃った犯人「京極瞬介」のものだったのだ、、、というストーリー。
恥ずかしながら、初の東野圭吾作品ですが(ミーハーぽくて敬遠していた)、
単純な感想としては、すごく読みやすい。言葉も平易なものが多く、人気が
あるというのも、とても頷けるものでした。
(村上春樹作品はアートで、東野作品は究極の娯楽といったイメージがつきました)
本作品は脳の移植による、性格の変遷を描いているが、正直なところ、
全然他人事ではないな、と感じました。
というのも、脳移植を受けていなくとも、「良心的な自分」(=成瀬純一)と
「暴力的な自分」(=京極瞬介)が共存しているということを常々感じながら
私は生きてきたからです。
もちろんのことながら、私は京極瞬介のように殺人のごとき非行に走る
つもりはさらさらありませんし、ありえません。しかし、他人を貶める気持ち
を抱えていることは否定できませんし、一方でそう思うことが悪いことだと、
自分に説いて聞かせる良心も同様に具えています。
そのように、成瀬純一と京極瞬介をバランスよく保ちながら、生きているような
そんなことをしみじみと感じました。
そういったバランスが崩れた時、人は非行に走ったり、自傷行為に走ったり
するのでしょうかね。なんとも、考えさせられる作品でした。
※余談ですが
読書メーターで「終盤詰め込み過ぎでは?」という意見が見受けられましたが、
私はそうは思いません。むしろ詰め込むことこそが、成瀬純一に残された時間の
短さを臨場感をもって読者に伝えるという効果を生み出しているように思えます。
■評価(10段階、5が平均)
★8…100パーセントのハッピーエンドでは無いところにこそ趣がある。
最後まで成瀬純一の意思が、葉村恵を守り切ったところが良かった。
「恵だけは殺させない」的な。何かのマンガにあったような。
ではまた。