【第14回】新釈 走れメロス 他四篇(9/1読了)
こんばんは、涼歌です。
また暑くなってきましたね。@TOKYO
森鴎外や太宰治の現代風にアレンジした本作は各作品、オムニバス形式
で展開されます。
※同じ人物が別の物語にも登場したりしますが、基本的には各々が独立
していると考えていいです。
自分の勉強不足もあるのかもしれませんが、面白く読めたのは
「走れメロス」くらいでした。
※ちなみに原作で読んだことがあったのは、「走れメロス」と「百物語」だけ
でした。
なんとこの「メロス」ではなく「芽野史郎」は、姉の結婚式を理由に
親友「芹名雄一」を人質にするも、助けるために走るどころか、逃げ回る。
ブリーフ一丁で踊るのが嫌だったからだ。そもそも芽野に姉はいない。
また暴君「図書館警察長官」は芽野が走るのを邪魔するどころか、何として
でも、親友を救わせようと、芽野に懸賞金をかけてまで、定刻までに連れ戻そう
とする。
なんともアベコベな本作品、オリジナルを知っていればいるほどに面白い。
たとえば、メロス(芽野)がセリヌンティウス(芹名)と再会を果たすシーン。
オリジナルだと「私を殴れ。力いっぱい殴れ」→「同じくらい音高く私の頬を殴れ」なのだが、
本作では「ちょっと手加減して殴ってくれ」→「同じぐらい手加減して殴ってくれ」となる
のである。
また最後のシーン。
オリジナルでは、全裸のメロスに少女がマントを差し出す形で終わる
→親友「この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく惜しいのだ」
勇者は、ひどく赤面した。
一方、オリジナルはちょっと違って、
ブリーフ一丁で踊る男三人に対して女性がバスタオルを差し出し
→女性「いいかげんにしたら、どう?」
勇者たちは、今さらひどく赤面した。
と後者はとてつもなく情けなく描かれているのである。
他にも対比できる点は数多くあるので、並べて読むとより一層楽しめそうです。
■評価(10段階、5が平均)
★5.5…原作を知っているほど楽しめると思います。