小説家志望 涼歌・サー・キッドの本の本当のところ

年間100冊を目標にするわたくし、涼歌の涼歌による涼歌のための本の感想ブログ。たまに自作小説も掲載予定。

【第17回】憂鬱でなければ仕事じゃない(9/21読了)

こんばんは、涼歌です。

 

今回は見城徹さん・藤田晋さん共著の「憂鬱でなければ仕事じゃない」です。

これは私が入社する2012年4月前後に読んで、非常に感化された本であり、

今回は3年ぶりに読む形となりました。

 

この本を読むと、いつも自分の甘さを実感させられます。

高いところからの景色を拝むには、それ相応のビジョンや努力が必要

とされるわけで。運良く高いところにたどり着けるわけではなくて。

1ビジネスマンとして、本書には非常に勇気づけられます。

 

特に次の言葉は最も印象に残りました。

「心から成功を望むなら、孤独に耐えることが必要だと思います」

「突き抜けたことをしたいなら、基礎を徹底的に学ぶことだ」

「いつも、ほどほどで安全に仕事をしている人間は、永遠に劇薬を手に入れることは

 できない」

 

身を砕いて、嫌な仕事を勧んで受け入れること。他人に受け入れてもらえない自分の考えを

大切にすること。すぐにオリジナルを目指さずに地道に努力を重ねること。

これらの大切さを本書は私に教えてくれます。

 

■評価(10段階、5が平均)

★8…本書はビジネス本でも、自己啓発本でもない。応援書だ。

【第16回】君にさよならを言わない(9/12読了)

こんばんは、涼歌です。

 

今回は七月隆文さんの「君にさよならを言わない」です。

 

この方の書かれた「僕は明日、昨日の君とデートする」を読んでファンになり、

本作品を読むことにしたのですが、結論から言うと正直ガッカリでした。

 

交通事故がきっかけで幽霊が見えるようになった主人公の児玉明(こだま あきら)

を中心に本作は展開されます。この世に未練を持って成仏できない幽霊たちの願いを

叶えるべく、主人公は暗躍するのである。

 

本作は短編集で、各々のボリュームが非常に少なく(平均70ページ程度)、なおかつ

この作者独特だが、改行があまりに多く行なわれるため、物語1つ1つがとても

薄っぺらく感じられた。(大どんでん返しのようなものも特にはない)

何だか、安っぽい青春ドラマを見せられているような、そんな気分にさせられて

はっきり言って全く感情移入できなかった。特に「前略 私の親友」での犯人との

取っ組み合いなんかはとてもひどい。描写が淡々としすぎていて、臨場感が感じられない。

 

しっかり調べたわけではないが、「僕は明日、昨日の君とデートする」の方が

後に書かれたのでしょうから、そこは少し安心しました。

 

あと、繰り返すようだが、改行が多すぎる。それは「僕は明日~」でも

少し感じていたことですが。(ただあの作品では、そうすることが味を出していたように思う)

※短編作品では改行が多すぎるのは逆に読みづらいかもしれませんね。そう思わせ

 られました。

 

■評価(10段階、5が平均)

★3…今、月9でやっている福士蒼汰本田翼の下手な三文芝居を小説で見ているようだ。

【第15回】くちびるに歌を(9/6読了)

こんばんは、涼歌です。

雨がすごい。。@TOKYO

 

今回は中田永一乙一)さんの「くちびるに歌を」です。

正直なところ、はじめさほど期待をしていなかったというのが本音

です。もちろん、中田永一さんの作品はとても好きなのですが、最近

乙一」名義の作品をずっと読んで乙一色に染まっていたので、

中田永一」色に馴染めるか不安だったのです。

 

しかし、そんな不安をこの作品は見事に払拭してくださいました。

 

物語は、二人の目線から交互に展開されます。

一人目が中学三年生の少女、仲村ナズナ

そして二人目が同級生の少年、桑原サトル。

 

ナズナ目線のストーリーも悪くはないのですが、私個人としては

サトル目線のストーリーに強く心惹かれました。

 

人の迷惑になるまいとする健気な姿。

ひょんなことから合唱部に入部することになり、そこでの仲間たちとの出会い。

自閉症の兄に対する心遣い。

思いを寄せる長谷川コトミを守るために見せた男気。

 

とくに、終盤の「十五年後の自分に当てた手紙」は圧巻でした。

『兄のことを心のよりどころにして、僕は自分をたもっていたのです』

彼は自分の未来が決まっているという。兄から必要とされ、兄のために

生きること。それが自分の決まった人生だと。しかし彼はそれを悲観する

ことはありません。むしろ心のよりどころとしているのです。人から必要と

されることを嬉しく思っているのです。

ただ一方で、こうも書いています。

『でも、たまに、みんなのことがうらやましくなるのです。

生きている理由を、これから発見するため、島を出て行くみんなのことが』

彼の葛藤がとてもよく描かれていると感じました。決して悪い事をしている

わけでもないのに、ぼそっと自分の罪を告白する姿が私の中へ切なさを

運んできました。もっと貪欲に生きてほしい。そう思ってしまいました。

 

※勝手なイメージですが、この自分にあてた手紙が、なんだか太宰治が書きそうな

 文章にありそうだなぁと感じました。同じ感想持たれた方います?

 

 

■評価(10段階、5が平均)

★8.5…すぐさま映画も観ましたが、映像としての優位性を差し引いても

     すごく良い作品でした。

【第14回】新釈 走れメロス 他四篇(9/1読了)

こんばんは、涼歌です。

また暑くなってきましたね。@TOKYO

 

今回は、森見登美彦さんの「新釈 走れメロス 他四篇」です。

森鴎外太宰治の現代風にアレンジした本作は各作品、オムニバス形式

で展開されます。

※同じ人物が別の物語にも登場したりしますが、基本的には各々が独立

 していると考えていいです。

 

自分の勉強不足もあるのかもしれませんが、面白く読めたのは

走れメロス」くらいでした。

※ちなみに原作で読んだことがあったのは、「走れメロス」と「百物語」だけ

 でした。

 

なんとこの「メロス」ではなく「芽野史郎」は、姉の結婚式を理由に

親友「芹名雄一」を人質にするも、助けるために走るどころか、逃げ回る。

ブリーフ一丁で踊るのが嫌だったからだ。そもそも芽野に姉はいない。

また暴君「図書館警察長官」は芽野が走るのを邪魔するどころか、何として

でも、親友を救わせようと、芽野に懸賞金をかけてまで、定刻までに連れ戻そう

とする。

なんともアベコベな本作品、オリジナルを知っていればいるほどに面白い。

 

たとえば、メロス(芽野)がセリヌンティウス(芹名)と再会を果たすシーン。

オリジナルだと「私を殴れ。力いっぱい殴れ」→「同じくらい音高く私の頬を殴れ」なのだが、

本作では「ちょっと手加減して殴ってくれ」→「同じぐらい手加減して殴ってくれ」となる

のである。

 

 

また最後のシーン。

オリジナルでは、全裸のメロスに少女がマントを差し出す形で終わる

→親友「この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく惜しいのだ」

 勇者は、ひどく赤面した。

 

一方、オリジナルはちょっと違って、

ブリーフ一丁で踊る男三人に対して女性がバスタオルを差し出し

→女性「いいかげんにしたら、どう?」

 勇者たちは、今さらひどく赤面した。

 

と後者はとてつもなく情けなく描かれているのである。

他にも対比できる点は数多くあるので、並べて読むとより一層楽しめそうです。

 

■評価(10段階、5が平均)

★5.5…原作を知っているほど楽しめると思います。

【第13回】マイナンバー対策がよ〜くわかる本(8/30読了)

こんばんは、涼歌です。

最近ちょっと天気悪すぎですね。どうにかなりませんかね。

 

今回は、なんと小説ではありません。

マイナンバー対策がよ~くわかる本」(曽我 浩氏/天道 猛氏著)です!

 

本職で結構関わる機会が増えて来ているので、勉強が必要かと

思い立ち、とりあえず購入して読了。かいつまんで説明します。

 

マイナンバーとは…

2016年1月に始まる、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度。

住民票を持つ人全てに12桁の番号を割り振り、税金や年金などの個人情報を、

マイナンバーと結びつけて管理するものです。

・2015年10月から随時、番号の付いた「通知カード」が簡易書留で届くので、

 本人が直接受け取らねばなりません。

・2016年1月以降、市区町村の窓口で「個人番号カード」というICカード

 無料で交換できます。(通知カードと引換。なお、顔写真も必要)

 ※住民基本台帳カードと同時に所有することはできません。

・個人番号カードの裏面には、番号が記載されます。他人に番号を教えては

 いけません。

・なお、法人や団体にも番号が与えられるが、個人とは違い13桁で、

 公開が原則です。

 

マイナンバー制度導入の目的として、「公正・公平な社会の実現」というのが

あって、所得の過少申告などの不正を防ぎやすくなり、徴税漏れの削減が期待

できるため、国民の間での不平等が是正されるとか謳われているのを耳にします。

しかし、これって精神的な問題であって、結局国民に還元されずに、政府の

懐が潤うだけでしかないんじゃないかな~と思います。

不平等の是正とか正直どうでも良いので、国民の税金を減らしてください。と

思うのでありました。

 

■評価(10段階、5が平均)

★?…わかりやすいが、内容が浅すぎた。かなり初心者向け。

 

ではまた。

 

【第12回】天帝妖狐(8/24読了)

こんばんは、涼歌です。

今日はもう寒すぎますね。8月とは思えないです。

 

今回は、乙一さんの「天帝妖狐」です!

表紙がお稲荷さんの怖い絵なので、ホラー作品だと思いながら読みはじめました。

割と初期の作品らしく、乙一さんには珍しく、やや荒削り感を感じたのは私だけでしょうか。他の作品が高いレベルでまとまっているだけに、やや格落ち感を感じました。(とは言え、十二分に楽しんでいるのですが)

 

収録されている2作品のうちで印象的だったのは、表紙のタイトルと同じ「天帝妖狐」

でした。

大まかなあらすじですが、少年期に主人公「夜木」はコックリさんをすることで

「早苗」という名の狐(?)に取り付かれ、ある時「四年後に死ぬ」という予言を

受けます。早苗の予言は絶対に外れません。しかし主人公は死にたくない。そんな

とき、早苗は夜木に話を持ちかけます。「私の息子になれ。そうすれば永遠の命を

与える」と。死にたくない夜木は、深く考えることなくその話を受け入れ、永遠の

命を授かるのです。しかし、ここからが悲劇の始まりでした。

夜木が怪我をする度に、その部分を早苗は夜木から奪っていくのです。奪われた部分

が次第に増えていき、夜木は人間とは言えない姿になっていきます。(どんどん狐?の

姿に近づいて行く)

時は流れ、夜木は絶望の淵に立たされていました。いくら自殺しようとしても

死ぬことができない。一方で、怪我をするごとに人間らしい部分が奪われていく。

人はおろか、あらゆる生物が夜木に近づこうとはしませんでした。

そんな時、夜木は一人の少女(杏子)と出会います。杏子は夜木に優しく

してくれました。家に泊まらしてくれました。仕事を探してくれました。

人として扱ってくれました。それが夜木にとって、大変幸せでした。

もう一生、人に優しくされることはないと思っていたのですから。

しかし、そんな幸せも長くは続きません。

その地区をしきる秋山という乱暴者に夜木は目をつけられます。夜木は

その姿を隠すために包帯を至るところにしていたからです。包帯をとる

ことを拒否した夜木は、秋山の怒りに触れますが、返り討ちにします。

(人間から離れていくほど、力が強くなっていた)

しかしそれがさらに秋山の逆鱗に触れることとなり、夜木は車でひかれ、

埋められることとなります。そのことにより、夜木はさらに人間としての

部分を失いました。暴走した夜木は秋山の四肢を一つずつもぎ取り、じわ

じわと処刑をしようとしますが、秋山の「神様」という祈りの言葉を聞いて

我に返ります。

そんな人間としての尊厳を失うことに絶望を感じながら、幸せを与えてくれた

杏子に手紙を書いて別れを告げるという物語です。

―さようなら、ありがとう、私に触れてくれた人。

 

あぁなんて切ないのだろう。

死にたくても死ぬことができない。一方で、自殺をして自らを傷つけることで

人間としての身体を失っていく。そして人間からは敬遠され、どんどん孤独のスパイラル

へとはまっていく。せめてフランツ・カフカの「変身」の主人公のように、衰弱して死ぬことができれば、いくらか救われるだろうに。死ぬことさえ許されない。とても理不尽なものである。

 

一方で、心だけは早苗に乗っ取られまいともがく夜木の姿がこれまた切ない。

たまたまだと思うが、この点の描写については、つい先日読んだ東野圭吾の「変身」の設定と似ているような気がしました。

・天帝妖狐:狐(早苗)に精神を乗っ取られまいともがく姿

・変身:ドナーに精神を乗っ取られまいともがく姿

 

ところで「早苗」という名前に何か意味はあるのでしょうか。

知っている方教えてくださいませ。

 

■評価(10段階、5が平均)

★6.5…作品は良いんですけど、夜木が気の毒で仕方ない。

 

ではまた。

【第11回】変身(8/21読了)

お久しぶりです、涼歌です。

 

今回は、東野圭吾さんの「変身」です。

 

 

大まかなあらすじ。【ややネタバレあり】

真面目で臆病な主人公「成瀬純一」はある日不慮の事故により銃で脳を打ち抜かれ、

世界初の脳の移植手術を受けることになる。成瀬純一は意識を取り戻し、手術は

成功したかに思われた。しかし次第に純一は、以前の優しい性格を失っていき、

暴力的な性格へと変貌していく。成瀬純一の脳に移植されたのは、実は純一を

撃った犯人「京極瞬介」のものだったのだ、、、というストーリー。

 

恥ずかしながら、初の東野圭吾作品ですが(ミーハーぽくて敬遠していた)、

単純な感想としては、すごく読みやすい。言葉も平易なものが多く、人気が

あるというのも、とても頷けるものでした。

村上春樹作品はアートで、東野作品は究極の娯楽といったイメージがつきました)

 

本作品は脳の移植による、性格の変遷を描いているが、正直なところ、

全然他人事ではないな、と感じました。

というのも、脳移植を受けていなくとも、「良心的な自分」(=成瀬純一)と

「暴力的な自分」(=京極瞬介)が共存しているということを常々感じながら

私は生きてきたからです。

もちろんのことながら、私は京極瞬介のように殺人のごとき非行に走る

つもりはさらさらありませんし、ありえません。しかし、他人を貶める気持ち

を抱えていることは否定できませんし、一方でそう思うことが悪いことだと、

自分に説いて聞かせる良心も同様に具えています。

そのように、成瀬純一と京極瞬介をバランスよく保ちながら、生きているような

そんなことをしみじみと感じました。

そういったバランスが崩れた時、人は非行に走ったり、自傷行為に走ったり

するのでしょうかね。なんとも、考えさせられる作品でした。

 

※余談ですが

 読書メーターで「終盤詰め込み過ぎでは?」という意見が見受けられましたが、

 私はそうは思いません。むしろ詰め込むことこそが、成瀬純一に残された時間の

 短さを臨場感をもって読者に伝えるという効果を生み出しているように思えます。

 

■評価(10段階、5が平均)

★8…100パーセントのハッピーエンドでは無いところにこそ趣がある。

   

最後まで成瀬純一の意思が、葉村恵を守り切ったところが良かった。

「恵だけは殺させない」的な。何かのマンガにあったような。

 

ではまた。